《「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書」が出ました。(その2)》(2017年10月4日)


 有識者会報告書の概要につきましては、記事その1で記したとおりですが、 9月21日に行われた講演会では、柳澤室長の解説と事前質問への回答がありました。

 「有識者会議報告書をどう読むか」という柳澤氏文責の補足の中では、以下のことが挙げられています。

● 「余地」はあるが、「余裕」はない。
・統合ありきではない。動ける余地は大きい。ただし時間的余裕はない。
・平成33年度末までに一定の結論を出すために、他大学との調整や組織改編の設置審査に2年くらいかかると考えると、日程的にはタイトである。

●これまでの延長程度では不足、成果まで出す必要がある。
・例年の取組の延長で「やった」で自己満足せず、具体的な成果と改善を。

●地域の教員養成の源流として。
・地域の課題への対応はもちろん、教育界以外も含めた支援者づくりを。
・地域の教育課題(学力、生活指導上の問題点)の解決につながるカリキュラムに。
・大学の教員自らが、自大学以外の視点を多く持ち、教員養成に厚みを。

 記事その1で述べたように、27年度の中教審の三つの答申の中で、特に「チーム学校」構想は、教員の働き方改革を実行するために、必然の施策です。柳澤室長が補足された内容にも、地域の教育課題解決につながるカリキュラム構成が必要なことが挙げられており、厚みのある教員養成とは、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、部活コーチなどの学校教育支援人材の育成プランを、教員養成大学の中で含有できることを意味しているのではないでしょうか。

 さらに柳澤氏は事前質問にも回答されましたが、その中でも興味深い内容がありました。

(問) 平成28年に有識者会議ができて、教員養成大学、学部等の改革議論が加速した感があるが、広島大学山崎教授の「将来の教員需要予測」(教員の需要減少が加速度的に起きていくこと)が以前から明らかになっていたことを見ると、改革議論が加速していることは、国の財政問題と関係するのか。

(回答)教員養成大学、学部の改革の議論は、28年から突然始まったわけではなく、以前から行われてきた。財政的な問題とリンクしないわけではないが、その問題と切り離して、議論はすでに起きていた。たとえ予算が増えたとしても、その議論は起きていたであろう。

 柳澤氏は、以前から教員養成大学、学部等の改革議論は起きていたと回答されたのです。当然本学もその議論の一端は理解していたはずです。他の大きな教育系単科大学は、すでに行われていたのであろうこの議論や教員需要減少の将来予測を踏まえて、教員養成学部に単純に特化するのではなく、たとえば生涯教育系を、学校教育支援人材育成コースへ改組するなどの改革を行ったのでしょう。本学の場合は、もともとあった臨床心理士養成コースもつぶしています。スクールカウンセラーの多くはこの資格をもっており、ほとんどの教員養成大学が臨床心理士養成をできる状況にもかかわらず、です。

 教員の働き方改革と教員需要減は必至です。学校教育を支える支援人材育成が、実は大学の体力の維持と、これからの学校創世のために必然の改革要素であったことは、とうの昔からわかっていたのではないですか。

 今、本学では慌ててこの報告書の内容を問題にしているようですが、現大学執行部の下では、もはや、学生定員の大幅縮小しか打ち出せないのではないでしょうか。九州地区の教育の将来を、本学の大学執行部にこれ以上任せることはできません。