《学長選考の「デキ公募」?》(2019年10月9日)


 福岡教育大学で突然学長選考の公示がなされたことは,前回の記事で述べた通りです。

 推薦受付期間が10月15日から18日の4日間しかなく,しかも公示から推薦受付終了までわずか2週間となっています。
このことの異常さを考えるために,現在福教大で行われている教員公募と比較してみたいと思います。

 9月24日付で,音楽教育ユニットのピアノ担当の特任教員の公募が公表されました。

 こちらは,任期3年の特任教員の公募であり,応募締切は11月29日(学長選考の候補者決定公示と同じ日ですが)となっています。
公募開始から応募締切まで,2ヶ月と少しあります。学長選考より随分長い期間,受付されることになります。

 大学教員の採用は,現在通常公募の形式で行われます。応募期間は1ヶ月程度は設けられることが通例でしょう。
応募期間が2週間程度しかないと,応募する可能性のある人に公募情報が十分行き渡らない恐れが強くなります。
応募期間が短いのは,実は内々で採用予定者が決まっており,それであまり応募が集まらないようにしたい(こっそり形式上の公募をしたい),という場合があります。

 これを俗に「デキ公募」と呼び,日本では滅多に裁判沙汰にはなりませんが,研究者間での話題になったり,悪評が立つことはあります。

 現在の福教大のピアノ特任教員の公募は,公示から締切まで2ヶ月もありますから,十分な応募期間が確保されていると言えるでしょう。

 では学長選考はどうでしょうか? 公示から推薦締切まで わずか2週間です。学内外の適任者に情報が行き渡り,推薦者が候補者に働きかけ,学長選考に応募するという大きな決断をし,準備をするのに十分な時間的猶予があるとは思われません。

 以前は意向投票によって実質的に学長選考を行っていたため,必ずしも学長選考会議の意図に沿った選考が行われるとは限りませんでした。現在福教大では意向投票は廃止され,同会議が主体的に選考を行うこととされました。

 しかし,同会議は,現在の学長が指名した経営協議会学外委員と,学長に指名された教育学部長が推薦した教育研究評議会評議員の一部によって構成されます。すなわち,現学長の意向が間接的に反映される体制となっているのです。
こうしてみると,わずか2週間の推薦期間しかない学長選考は,現学長(執行部)の意向のもとで進められる「デキ公募」であるという疑いが強くなります。

 法人化以後,とくに学校教育法改定後の学長は,自らの裁量で大学の進む道を左右しうる,強大な権限を有します。大学の現在の学生,将来の学生,教職員の学修・教育研究・生活を左右し,大学のステータスや名誉という意味では,卒業生の利害にも大きく関わります。教員養成大学として,福岡・九州の学校教育への影響も大きいと言えます。単科大学とは言っても,影響の及ぶ範囲は狭いとは言えず,責任は重大です。そうであるからこそ,運営費交付金として30億円以上の税金が毎年支出されているのです。

 このような学長の選考が,現学長(執行部)のもとでの「デキ公募」(禅譲)で済まされて良いはずはありません。
大学の一名の教員の公募が,適正な応募期間のもとで行われ,他方一教員よりはるかに強大な権限を持つ学長の選考が「デキ公募」で行われるとすれば,上に行けば行くほど恣意がまかり通るということになります。

 参考のために,今回の学長選考の日程を次に示します。

2019年
10月4日(金) 公示
10月15日(火)13時~18日(金)16時 候補者推薦書受付
10月23日(水)9時 候補者指名の公示
10月31日(木)16時 所信表明書締切
11月1日(金)16時  所信表明書公示
11月19日(火)14時半~ 公聴会
11月26日(火)15時15分~ 面接
11月29日(金)10時 候補者決定公示

 応募期間の長さについては,他大学との比較も必要と思いますので,現在・直近の国立大学の学長選考の状況について情報提供をお願いしたいと思います。コメント欄かメッセージでお寄せ下さいますようお願いいたします。