東京大学の総長選考過程や、総理大臣による日本学術会議委員の任命拒否のことが問題となっています。
日本学術会議の問題は、「新会員は日本学術会議の推薦に基づいて、総理大臣が任命する」という規定に沿って、これまでは推薦通りに任命されてきたものが、今回、菅総理大臣により6名の新会員候補が任命拒否されたことによります。
これは大変ことです。
「推薦に基づいて、学長(組織のトップ)が決定(任命)する」という図式は、2004年の法人化以降の国立大学法人において、ガバナンスの象徴としてあらわれました。
2015年の学校教育法の改正により、学長の暴走を食い止めてきた教授会は弱体化し、学長のガバナンスはさらに極端に進むこととなりました。
その最も先進的事例が福岡教育大学です。
今問題となっている事例より、10年先を走っている感があります。
2013年11月の学長選考において、教職員による意向投票結果を大きく覆し、学長選考会議は当時の寺尾学長を再任しました。その後、本学で起きてきたおびただしい数の問題は、「学長がすべてを決定する」というガバナンスのもとの圧政によります。
2013年の意向投票結果の覆し後は、意向投票が廃止されました。学長が指名した学内外の計12名が、学長選考を行いますが、当然のことながら、学長が指名した人たちが次の学長を選ぶ訳ですから、学長の意思をそのまま引き継いだ次期候補が新学長に選ばれる図式が容易に成り立ちます。
本学の場合はそれが極端に働いた感があります。
その寺尾元学長は、大学院教授会が選出した研究科長の任命を拒否、また教育研究評議会議員に推薦母体が推薦した教員の指名を拒否するという、日本学術会議の問題と極めて似たことを行いました。
詳細はこちらに書いています。
その結果、その任命拒否などに関する問題で、寺尾元学長と櫻井前学長(当時理事)の不当労働行為が認定され、大学側は不服として、控訴を続け最高裁まで争った結果、不当労働行為が決定づけられました。が、学長選考会議は、寺尾氏ののち、櫻井氏を学長として選考しましたし、二人の学長の業績を良好として評価しました。何より、寺尾氏は学長退任後、櫻井学長のもとで、副学長として長らく本学に留まったのです。
元学長、前学長のガバナンスの旗振りのもと、他にも実に多くの問題が起こりました。 教授会は今や実質的審議は行われず、何らかの発言をしても「学長に伝えます」「決定するのは学長です」が繰り返される伝達式です。
本学において起こってきた様々な問題をあらためて、提示してまいります。
皆様、ここに記してきた数多くの過去の記事をどうぞお読みください。
本学の姿は、間違いなく、現在他大学や学問の世界で起きていることの将来を暗示しています。
本学の問題は、学問・研究の危機であると同時に、子どもに対する将来の教育の危機をも意味します。
その最も象徴的な例の一つが、元学長が強力に推進した初等教員養成課程の選修制の廃止であり、文科省の掲げる今後の方針と真逆の舵を取ってしまったことはあまりに明白です。
将来の教員を目指す学生もOBも教職員の多くも、そして子どもたちも泣いています。